ホテルM&Aに向けて運営資料を用意するときは、売上だけでなく、何室を販売し、どの経路から予約が入り、どの費用がかかっているかを同じ期間で整理します。ここでは、稼働率・ADR・RevPAR・OTA比率を、確認可能な月次資料にまとめる方法を解説します。
稼働率・ADR・RevPARの違い
| 指標 | 表すもの | 基本的な計算 |
|---|---|---|
| 客室稼働率 | 販売可能な客室に対して販売した割合 | 販売客室数 ÷ 販売可能客室数 × 100 |
| ADR | 販売した客室1室あたりの平均客室単価 | 客室売上 ÷ 販売客室数 |
| RevPAR | 販売可能な客室1室あたりの客室売上 | 客室売上 ÷ 販売可能客室数 |
期間の指標は、同じ期間の延べ客室数と売上を使って計算します。観光庁の経営ガイドライン概要版でも、ADRとRevPARの算出が紹介されています。
例えば、計算方法を説明するために、30日間・20室がすべて販売可能な施設を考えます。販売可能客室数は延べ600室、販売客室数が420室、客室売上が420万円なら、稼働率は70%、ADRは1万円、RevPARは7,000円です。これは架空の計算例で、当センターの成約実績や相場ではありません。
計算の前に、集計ルールを揃える
- 期間:予約日ではなく宿泊実績を集計しているか。月の開始日と終了日は揃っているか。
- 客室数:休館日や改装中の客室をどう扱ったか。期間中の増室・減室があるか。
- 売上範囲:客室売上と食事・宴会・売店などを区別できるか。
- 会計処理:税・サービス料・OTA手数料・取消料をどう扱っているか。
- 出典:PMS、サイトコントローラー、会計資料のどの項目を使ったか。
集計方法は施設や資料によって異なる場合があります。数字だけを他施設と比較せず、算定ルールと変更履歴を併記します。方法が途中で変わった場合は、過去の数字を書き換える前に、何が変わったかを説明できるようにしましょう。
月次表は、数値と背景をセットにする
まず手元で確認できる期間から、月ごとの販売可能客室数、販売客室数、客室売上、稼働率、ADR、RevPARを並べます。比較できる前年実績があれば同じ条件で添え、差が大きい月には理由と確認資料を記録します。
| 施設・需要の特徴 | 数値に添える情報 |
|---|---|
| リゾート・季節営業 | 営業日、休館、降雪・台風等の影響、繁忙期の予約集中 |
| ビジネスホテル | 平日と週末の違い、法人・長期滞在、主な契約の期間 |
| インバウンド需要 | 集計できる範囲での客層・予約経路・滞在日数、集計の根拠 |
| 温泉旅館・料理旅館 | 食事付きプラン、日帰り・宴会、部門別売上と人員配置 |
背景説明は「今後も伸びる」といった推測だけでなく、営業日数、予約残、契約、改装履歴など確認できる資料と結び付けます。
OTA比率と直予約比率は、分母を明示する
OTA比率を予約件数で見るのか、販売客室数や客室売上で見るのかを決め、表に明記します。取消済み予約や未宿泊の予約が混ざらないよう、実績と予約残を分けます。
経路別には件数・売上だけでなく、手数料、広告費、取消条件、入金時期、運用担当も整理します。直予約比率が高いという理由だけで条件がよいと判断せず、集客や顧客対応にかかる費用も確認できるようにします。法人・旅行会社・団体契約の引継ぎは、予約・契約承継の確認事項をご覧ください。
口コミ・利益・修繕も別の資料として確認する
口コミは、媒体、確認日、件数、主な指摘、対応状況を記録します。点数だけを切り出すより、清掃、設備、接客などの指摘にどう対応したかを示す方が、現状を確認しやすくなります。
ADRやRevPARは客室売上の指標で、利益や売却価格そのものではありません。人件費、光熱費、賃料、販譲渡企業数料、料飲部門の費用、修繕予定を分けて整理します。GOPやNOIなどを提示する場合も、何を加減した数値かが分かる明細を添え、会計資料との関係を確認してください。
資料間で差があるときは差額と理由を記録し、判断が必要な部分は会計担当者や専門家へ確認します。個別施設の価格を、この指標だけで決めることはできません。
初回相談前の資料チェックリストで準備全体を確認できます。売却を決める前の段階でも、譲渡企業様向け無料相談をご利用ください。

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