ホテル・旅館の売却相談は、資料をすべて揃えてからでなくても始められます。最初に必要なのは、施設の概要、相談したい理由、引継ぎで守りたい条件を整理することです。この記事では、初回相談の前に用意するメモと、その後に確認する資料を分けて紹介します。
まず1枚のメモにまとめたい5項目
- 相談の背景:後継者、設備更新、人員体制など、いま気になっていること。
- 施設の概要:ホテル・旅館などの種類、おおまかな地域、客室数、通年営業か季節営業か。
- 事業の範囲:土地建物を所有しているか借りているか、宿泊以外に飲食・宴会・温浴などがあるか。
- 希望条件:時期、従業員の雇用、屋号、既存予約、地域の取引先との関係など。
- 連絡方法:連絡してよい時間帯と連絡先、避けてほしい連絡方法、現在相談内容を知っている人。
希望条件には「必ず守りたい」「できれば実現したい」「まだ決めていない」を付けると、相談の優先順位が明確になります。売却を決めていない場合は、その状態をそのまま伝えて構いません。
資料は「ある・探せる・未確認」で棚卸しする
以下は準備の目安です。初回にすべて提出する必要はありません。資料名、対象期間、保管先、管理している担当者を一覧にしておくと、必要になったときに探しやすくなります。
| 分野 | 手元で確認する資料の例 | 相談時に伝えたいこと |
|---|---|---|
| 売上・費用 | 決算書、月次損益、宿泊・飲食・宴会などの部門別集計 | 対象期間、休館や大規模改装など普段と異なる事情 |
| 稼働・販売経路 | 販売室数、販売可能室数、客室売上、OTA・直予約・法人契約の集計 | 集計方法と出典、繁忙期・閑散期、販売を止めている客室 |
| 土地建物・契約 | 権利関係の資料、賃貸借・運営委託・リースなどの契約一覧 | 誰が所有・契約・運営しているか、契約書を確認できるか |
| 建物・設備 | 図面、設備台帳、点検・修繕履歴、更新見積り | 未対応の指摘、故障中の設備、予定している工事と営業への影響 |
| 許可・届出 | 営業許可証、変更履歴、行政との相談記録 | 資料の所在、名義や施設の現況について未確認の点 |
| 人員・運営 | 役割別の人数、勤務体制、清掃などの委託業務一覧 | 支配人・料理長などに集中している仕事、採用中の役割 |
| 予約・システム | 宿泊月別の予約件数・前受金の集計、利用中のPMS・OTA一覧 | 予約管理の担当、法人・団体予約、引継ぎ時に止めたくない業務 |
| 借入・支払予定 | 借入やリースの一覧、返済・支払予定、金融機関との相談記録 | 直近で予定している更新・返済・協議の時期 |
分からない項目は推測で埋めず、「未確認」と記録してください。例えば、建物の修繕を所有者と運営会社のどちらが負担するか不明なら、判断を急がず、該当する契約書と窓口を確認する作業として残します。
数字は金額だけでなく、出典と集計範囲を添える
月次資料を並べる際は、同じ月・同じ施設・同じ売上範囲を比較できるようにします。客室売上と飲食・宴会を含む総売上、予約日と実際の宿泊日、税込と税抜などが混ざっていないかを確認しましょう。
PMS、予約サイト、会計資料の数字が一致しない場合は、差額と確認担当を記録します。初回相談のために数字を無理に合わせる必要はありません。休館、販売停止室、団体キャンセルなど、月ごとの事情も短く添えると状況が伝わります。詳しくはホテルM&AでADR・RevPAR・OTA比率を整理する方法をご覧ください。
最初に共有する情報と、後から確認する情報を分ける
初回は施設名を伏せ、地域や客室数を幅のある表現で伝えることもできます。ただし、所在地、客室数、特徴的な温泉や料理などの組合せで施設が推測されることがあるため、どこまで伝えるかを相談先と確認しましょう。
予約者名簿、従業員名簿、身分証、口座情報、システムのパスワードを、最初の相談メールにまとめて添付する必要はありません。まずは集計表や匿名の役割一覧を使い、詳細資料が必要になった段階で、利用目的、共有相手、送付方法を確認します。情報開示の考え方はホテル・旅館売却の情報管理で解説しています。
初回相談で確認しておきたい質問
- 現状の資料で何を整理でき、追加で何を確認する必要がありますか。
- 施設名や資料は、いつ、誰の了解で、どの相手に共有されますか。
- 雇用・屋号・既存予約などの希望を、どの段階で候補先に伝えますか。
- 相談から次の打合せまでに、誰がどの作業を担当しますか。
- 相談先への手数料と、それ以外の費用には何が含まれますか。
当センターが譲渡企業様から受領する相談料・着手金・中間金・月額報酬・成功報酬は0円です。外部専門家費用、登記、公租公課、その他実費などは別途発生する場合があります。対象範囲は譲渡企業様向けのご案内をご確認ください。
個別の課題は、該当する資料から確認する
- 修繕や設備更新が気になる方:建物・設備の確認表と修繕計画
- 従業員や住み込み勤務の引継ぎが気になる方:従業員・社宅・住み込み雇用の整理
- 土地建物を借りて営業している方:賃貸借・リース契約の確認
- 予約システムの引継ぎが気になる方:PMS移行と予約データ承継
- 温泉・料理・地域との関係を整理したい方:温泉旅館で確認する源泉・設備・料理・人材
売却方法、許認可、雇用や契約の扱いを、このチェックリストだけで決めることはできません。初回は資料の所在と不明点を整理し、必要な確認先と進め方を決める機会として活用してください。全体の段取りはM&Aの流れをご覧ください。
資料が揃っていなくても相談できます
「後継者が決まっていない」「修繕の前に選択肢を整理したい」「従業員への影響が心配」など、現在の状況からお聞かせください。初回相談の前に、施設概要と気になっている点を短くまとめるだけでも、次に確認する作業を整理できます。

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